バナナの皮といえば、マンガやアニメでおなじみの“お約束ギャグ”。
誰かがうっかり踏んでしまい、「おっとっとっと...」と派手に転ぶ
子どもの頃から見慣れたこのシーンに「いったいどれだけリアルなの?」とツッコミを入れたくなった経験はありませんか?
ところが、それを本気で検証しようとした研究チームがいました。しかも、この日本に!
しかも彼らの研究は2014年にイグ・ノーベル賞(物理学賞)を受賞するという快挙(?)を成し遂げ、一躍注目を集めました。
今回はその珍研究「バナナの皮はどのくらい滑りやすいのか?」をめぐるエピソードを、思わず「へぇ~」と言ってしまうポイント満載でご紹介します。
目次
きっかけは“マンガのお約束”を真面目に検証したい!
研究を行ったのは、日本の北里大学のグループ。
もともとは「バナナの皮って本当にそんなに滑るの?」「どれぐらいの摩擦係数があるの?」という、子どもじみた(?)疑問から始まりました。しかし、おそるべきはその熱意と科学的手法。
- バナナの皮を実験台に載せる
- 上から一定の圧力を加える
- 靴底の素材や床との間に生じる摩擦力を精密に測定する
という、本格的なトライボロジー(摩擦学)の研究そのものです。そして結果としてはっきり分かったのは、バナナの皮は本当に「かなり」滑りやすいということでした。
なぜそんなに滑る? バナナの秘密は粘り気
バナナの皮が滑りやすさの秘密は、皮と果肉の間に含まれている「多糖類(デンプンやペクチンなど)」にあるといわれています。
- 踏んだ瞬間に皮が潰れる
- 粘度の高い“ぬるぬる”成分が“潤滑剤”のような役目を果たす
- 靴底と床の間の摩擦が低下して「ズルッ!」と滑る
まさに自然の潤滑油がはたらいている状態なのです。
なお、研究チームによると、バナナの皮と靴底との間の摩擦係数はおよそ0.07ほどだとか。
濡れた氷の上や、オイルでかなり滑りやすくなった路面レベルと同等という説もあり、マンガの演出もあながちウソではないかもしれません。
イグ・ノーベル賞を受賞! 人を笑わせ、そして考えさせる研究
「バナナの皮でどのくらい滑るのか?」などといった研究が国際的に評価されたというのは、一見すると不思議に思う方もいるでしょう。
ところが、この研究はイグ・ノーベル賞(Ig Nobel Prize)の理念「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」にぴったり合致したのです。
イグ・ノーベル賞とは、アメリカの科学雑誌『Annals of Improbable Research』が主催する賞で、本家のノーベル賞受賞者たちも授賞式に参加して大いに盛り上がります。
ユーモアあふれる研究テーマでありながら、学問的には真面目であり、かつ多くの人に「科学って面白いな」と感じさせてくれる好例と言えるでしょう。
実は実用的な一面も?
「バナナの皮の滑りやすさ」なんて、ただの好奇心やギャグの延長かと思いきや、実は産業界にも応用できるかもしれないという真面目な一面があります。
- 粘度の高い潤滑剤としての応用
バナナの粘り成分が、機械部品の摩擦を低減する可能性を探ることも考えられます。 - 足元の安全対策
逆に、「どうやったら滑りにくい路面を作れるか」を研究する際、バナナの皮の摩擦データが比較の基準になるかも?
もちろん「バナナの皮を道路に敷き詰める」なんてことはしないでしょうが、思わぬ形での知見は得られるかもしれません。
家で試してみる? でも安全にはご注意を
もし、あなたがその滑りやすさを自宅で体験してみたいなら簡単な方法で確かめられます。
- バナナの皮を床に置く
- 上から軽く足を乗せる
- どれくらい滑るか、そっと力をかけてみる
ただし、本気で足を乗せたり、勢いよく踏むと転倒事故の危険があるので注意!
床や靴底の素材によってはまったく滑らないこともありますが、油断は禁物です。
まとめ
「バナナの皮はどのくらい滑りやすいのか?」という素朴な疑問を、ここまで徹底的かつ科学的に解明してしまうとは驚きですよね。
まさにイグ・ノーベル賞が求める「笑いと知的好奇心の融合」を象徴する研究と言えます。
日常に潜む「そういえば、あれって本当はどうなんだろう?」という疑問も、深く掘り下げてみると実は奥が深いのかもしれません。
次回、バナナを食べたときに皮を捨てる前に、そっと足で踏んでみて「なるほど、これが研究対象になったのか」と思いを馳せてみるのも面白いかもしれませんね。
もちろん、周りに十分注意してから、自己責任でお願いします。