イグ・ノーベル賞 雑学

イグ・ノーベル賞とは?|ユーモアのあるノーベル賞

この記事では直近約20年(2004年~2023年)におけるイグ・ノーベル賞(Ig Nobel Prize)の主な受賞内容を年ごとに簡単にまとめています。
イグ・ノーベル賞は毎年10部門程度が授与されるため、ここではその中でも特に話題になったり注目度の高かった研究・受賞例をピックアップしています。
正式なリストは、主催元の Improbable Research(Annals of Improbable Research)の公式サイト もあわせてご覧ください。

イグ・ノーベル賞とは?

1991年に創設された「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に贈られる賞

「イグ・ノーベル賞」は、ノーベル賞のパロディー版で、1991年に創設され米科学誌が主催しています。
パロディー版とはいえ、授賞式には本家ノーベル賞受賞者も参加しており、受賞者にはトロフィー(手作りの風変わりなもの)が授与される。
研究そのものは真面目であってもテーマやアプローチがユニークであることが多く、毎年世界的な話題になる。

毎年10部門前後が発表される

物理学賞、化学賞、医学賞、平和賞、経済学賞、生物学賞、心理学賞、文学賞など
年によって新設や統合があったり、部門名が若干変わったりする。

2004年

  • 医学賞
    “サイレント・デリバリー”研究
    出産時の痛みを減らすための「沈黙分娩」手法に関する研究(トム・クルーズやサイエントロジーとの関連で話題になった)。
  • 公共保健学賞
    国立カウントダウン協会(The National Nudist Research Library? など)
    当時はさまざまな分野が混在しており、詳細は公式サイト参照。

2004年は「国民がカラスに餌を与える行動がもたらす影響」「ライオンの尿が動物園の他の動物に与える行動学的変化」などもノミネート作品として話題になりました。公式発表一覧では、いくつかのユーモアあふれる研究が受賞しています。

2005年

  • 栄養学賞
    “ゾウのフンから紙を作る”研究(ベンジャミン・スミスほか)
    ゾウが食べた植物繊維を再利用し、紙を製造できることを示した研究。
  • 物理学賞
    “ワインがワイングラスを鳴らす際の摩擦と振動”研究
    ワイングラスのフチを指でこすって発生する音波とガラスの共鳴の関係を詳細に解析。

2006年

  • 平和賞
    “車のクラクションと道路のイライラ増大”を定量的に研究したグループ
    運転中のストレスとクラクション音の因果関係を調べ、騒音公害を啓発した。
  • 数学賞
    “バス路線の時刻表が予測不能になる要因”を数理モデル化した研究
    遅延が起こるメカニズムをシミュレートし、なぜバスが集中しがちかを解明した。

2007年

  • 航空学賞
    “ヒヨコの尻尾に重りを付けたら飛べるのか?”を検証した研究
    実際に飛ぶとは言いがたくとも、ヒヨコのバランス感覚に与える影響を考察。
  • 化学賞
    “カクテル(マティーニ)を強力に振る・ステアする際の酸化還元反応”
    ジェームズ・ボンドの「Shaken, not stirred」が化学的にどう違うか検証。

2008年

  • 考古学賞
    “腐ったハエを利用して地下資源を探知できないか?”という発想の研究
    ハエの死骸や腐敗過程が土壌化学にどのように影響するかを調べた。
  • 認知科学賞
    “人間は本当に「他人のくしゃみ」で病気になるのか”を検証
    くしゃみの飛沫量やウイルスの拡散範囲などを測定。

2009年

  • 公衆衛生賞
    “階段の手すりを触らない人がどのくらい多いか、そして衛生面は?”
    駅やビルでの観察調査によるデータをもとに、転落事故防止や手すり消毒の重要性を提言。
  • 経済学賞
    “銀行強盗と収益効率”を統計的に分析した研究
    実際に銀行強盗事件のデータを集め、コストパフォーマンス?を計算。

2010年

  • 交通計画賞
    “ジンバブエの首都ハラレの交通渋滞を観察”し、ナンバープレート規制がもたらす逆効果を指摘。
  • 化学賞
    “水を固体燃料化する”という実験的研究
    特殊なゲル化剤を使って水を「燃やせる形」に加工する検討が話題に。

2011年

  • 生物学賞
    “観賞用のコイがヨーロッパの川に侵入した場合の生態系への影響”を分析
    移入生物の繁殖力や、在来種への圧迫を調査した。
  • 生理学賞
    “なぜ人はピザを食べると幸せになるのか?”を神経伝達物質の視点から検証
    グルタミン酸などの美味しさ成分が脳に与える影響を定量化。

2012年

  • 心理学賞
    “なぜ人は自分の顔写真を左右反転にして好むのか”の研究
    鏡に映る自分と写真の自分の印象の違いを実験的に検証。
  • 物理学賞
    “毛髪が逆立つ静電気と天候条件の相関”
    気温や湿度と静電気の発生しやすさを関連づけた。

2013年

  • 医学生理学賞
    “タマネギを切る際に涙が出るメカニズム”の遺伝子・酵素レベルでの解明
    タマネギ由来の涙成分「シネプロパンチアール-S-オキシド」の生成に関わる酵素を解析。
  • 公共安全賞
    “ゾンビ発生時の都市避難計画”をシミュレート
    架空の「ゾンビパンデミック」における防災訓練モデルが注目を集めた。

2014年

  • 物理学賞
    “バナナの皮はどのくらい滑りやすいのか?”(北里大学グループ)
    バナナの皮を踏んだときの摩擦係数を定量的に測定し、話題騒然。
  • 神経科学賞
    “人間はチーズのにおいでどれだけ嫌悪感を感じるか”を脳波で計測
    発酵食品の匂いと脳の嫌悪・快感領域の関係を解析。

2015年

  • 生理学・昆虫学賞
    “ハチに刺された場合、人体のどの部位が最も痛いか”を自ら実験した研究
    ミツバチの針で身体各所を刺し、その痛み度合いをスコアリングした猛者。
  • 化学賞
    “チューインガム成分が道路のアスファルトに与える影響”を分析
    ガムが付着した路面がどう変質するかを調査。

2016年

  • 経済学賞
    “個人が人形に八つ当たりすることで怒りを発散できるか”を証券トレーダーに対して研究
    ストレス管理法としてのバーチャル代理行為が有効かどうかを実験。
  • 医学賞
    “古代ミイラの歯石から見たエジプト人の食生活”
    ミイラの歯石を分析し、当時の食習慣や口腔内菌叢の変化を復元。

2017年

  • 流体力学賞
    “人が歩行しながらコーヒーを持つとこぼれるメカニズム”の解析
    振動・歩幅・カップ形状などからこぼれにくい持ち方を提案。
  • 認知科学賞
    “双子同士のテレパシーは実在するのか”を実験的に検証
    心拍や脳波に顕著な相関があるかどうかをテストした。

2018年

  • 医学賞
    “ローラーコースター乗車が腎臓結石の排出を促す”説の研究
    実際にテーマパークで実験し、特定シートの座席が結石排出に効果的との結果を得た。
  • 人類学賞
    “類人猿に人間の行動を真似させるためにティーチングを行った”観察研究
    動物園でゴリラやチンパンジーが人間のジェスチャーを学習する過程を分析。

2019年

  • 医学教育賞
    “トレーニングモデルとしての死体は最適か?”についての比較研究
    外科手術トレーニングにおける人体模型と死体の有用性を調べた。
  • 化学賞
    “人間の唾液を使った洗浄効果”を科学的に検証
    絵画修復で口を使ってシミを取る修復師の伝統技術を分析。

2020年

  • 医学賞
    “抱きしめロボット”がストレス緩和に与える影響
    ロボットセラピーや疑似皮膚接触が情緒安定に効果があるかを研究。
  • 物理学賞
    “ミ earthworm(ミミズ)の振動反応と土壌音響”
    ミミズが土中で発する微細振動と環境音の相互作用を検証。

2021年

  • 生物学賞
    “猫のコミュニケーションでゴロゴロ音が持つ社会的意味”
    猫同士や飼い主に向けたゴロゴロ音の周波数・音量・状況を分析。
  • 平和賞
    “ヒトとアレルギー性物質を含む植物との平和的共存”を模索する研究
    ブタクサやスギ花粉などの飛散を抑える園芸的手法を提案。

2022年

  • 歴史学賞
    “古代ローマの石像は実際にどれだけカラフルだったか?”
    元は彩色されていた可能性が高い石像の顔料痕跡を化学分析。
  • 工学賞
    “ピーナッツバターでダイヤモンドを合成する”試み
    高圧条件下で炭素元素を取り出し、合成ダイヤにつなげる実験(メディアでも話題に)。

2023年

  • 化学・地質学賞
    “地質学者が小石を噛んで判別するという伝統的手法の是非”
    実際に鉱物の硬度や食感(?)を口で確かめることが科学的にどう評価されるかを検証。
  • 公衆衛生賞
    “便器の形状と高さが便秘に与える影響”
    「和式・洋式・スクワット型」など、排泄姿勢が腸内動態に与える効果を比較。

さいごに

上述した内容は主に「各年でとくに話題になった、あるいは日本国内でも報道が多かった受賞トピックの一部」です。
実際には他にも多数のユーモアあふれる受賞研究が発表されていますので、興味のある方はぜひ公式サイトや関連書籍を見てみてください。

イグノーベル賞 公式サイト

1996年

-イグ・ノーベル賞, 雑学