遅漏や膣内射精障害とは、性行為時に本人が意図するよりも射精のタイミングが大きく遅れたり、挿入後に中折れして最後まで射精できなかったりする状態を指します。
マスターベーションでは問題なく射精できる一方、性行為時のみ射精が難しい場合は「膣内射精障害」と呼ばれることもあります。
一見すると「相手に申し訳ない」「自分に魅力がないのでは」など、互いにストレスを抱えてしまいがちですが、正しい原因の把握とトレーニングで改善が期待できるケースは少なくありません。
ここでは遅漏・膣内射精障害の主な原因と、具体的な改善方法を解説します。
目次
遅漏・膣内射精障害とは
本人やパートナーが射精の遅れをストレスに感じている場合に、遅漏や膣内射精障害と考えられます。
膣内射精障害は特に、挿入はできても最終的に射精に至れない状態を指し、「性行為=射精」がゴールと捉えられがちな状況のため、気まずさやパートナーの不安を引き起こしてしまうことがあります。
原因によっては放置するとセックスレスや関係悪化を招くおそれがあるため、早めに対策を講じることが大切です。
遅漏が起きる3つの主な原因
不適切なマスターベーション(鈍麻性遅漏)
もっとも多い原因が、膣内の刺激とまったく異なる方法で強い刺激を繰り返す「不適切なマスターベーション」です。
たとえば「床オナ(床や布団に強くこすりつける行為)」「強グリップ(陰茎を強い力で握りすぎる)」「足ピン(足を伸ばして力んだ状態で射精する)」など、性行為では得られない特殊な刺激に慣れてしまうと、射精が極端に遅れたり難しくなったりします。
これを「鈍麻性遅漏」と呼ぶことがあります。
加齢や体力低下(衰弱性遅漏)
年齢とともに勃起力や全身の体力が低下すると、挿入時間が長引くほど中折れを起こしやすくなり、射精に至る前に断念してしまうケースも出てきます。
勃起力が不十分だと刺激が弱くなるため、射精までに多大な時間がかかり、結果として遅漏状態になることがあります。
こうした加齢由来の遅れは「衰弱性遅漏」と呼ばれ、放置すると勃起不全(ED)が進む可能性もあるため要注意です。
心理的要因(心因性遅漏)
妊活のプレッシャーやトラウマ、パートナーとの不和など、精神的ストレスが射精反射を抑制する場合があります。
こちらは「心因性遅漏」と呼ばれ、原因となる心理的障害を除去できれば比較的改善しやすいこともあるものの、ストレスや不安が長期化すると更なる性的機能の低下を招くこともあります。
改善のためのトレーニングや治療法
遅漏や膣内射精障害の治し方は、原因によって異なるため、それぞれの原因にあわせた主な改善手段を紹介します。
不適切なマスターベーションを見直す(鈍麻性遅漏向け)
低握力スラスト運動を習慣にする
卵を包むくらいのやさしい握力で、実際の性行為に近いスピード・姿勢でマスターベーションを行う方法です。足を曲げ、陰茎を身体と垂直に保ち、強く握りしめたり高速ピストンをしないよう注意します。
いわゆる「床オナ」や「強グリップ」「足ピン」はすぐにやめ、膣内の刺激に近い感覚を身体に覚えさせます。
Stop and Start Method(セマンズ法・スクーズテクニック)
もともと早漏治療で知られるトレーニング法ですが、射精のタイミングを自分でコントロールする意識を身につける点で、遅漏にも有効とされています。
射精寸前に刺激を中断(または強く圧迫)し、感覚が落ち着いたら再度刺激して最終的に射精へ導くやり方です。自分の射精リズムを把握しやすくなります。
マスターベーション・エイドを使う
TENGAヘルスケアの「MEN’S TRAINING CUP」など、膣に近い刺激を段階的に体験できるアイテムを活用するのも効果的です。
最初は刺激の強いカップから始めて徐々に弱めのカップに移行し、最終的に膣に類似する刺激で射精できるようトレーニングします。
ゲーム感覚で行えるため、続けやすいというメリットがあります。
衰弱性遅漏へのアプローチ
ED治療薬の活用
挿入中に勃起力が維持できなくなる場合は、バイアグラやレビトラ、シアリスなどのED治療薬を使用するのが有効です。
勃起がしっかり維持されることで膣内からの刺激を十分に受けられ、射精へとスムーズにつながりやすくなります。オンライン診療にも対応しているクリニックが多いため、通院が難しい方でも相談しやすいです。
ヨヒンビンの使用
海外では古くから媚薬として使われていた成分で、性欲や勃起力をサポートする働きが報告されています。
使用には適切な量の把握が必要で、効果や副作用には個人差があるため、購入時や使用量には注意しましょう。
補中益気湯など漢方薬
「補中益気湯」は加齢や疲労による体力の衰えを補う漢方薬として知られ、男性更年期の対策にも用いられます。
虚弱体質や疲労感のある人が適量を服用することで体力が回復し、性機能の改善にも寄与する可能性があります。ただし、漢方薬のみで根本的に射精障害が治るわけではないため、生活習慣の見直しや他の治療との併用が望ましいです。
心因性遅漏へのアプローチ
カウンセリングで心理的ストレスを解消
妊活やトラウマ、パートナーとのすれ違いなど、精神的な要因が強い場合はカウンセリングが必要になります。
医師やセラピストのサポートのもと、ストレスの根源を探りながら心理的な負担を減らしていくことが大切です。パートナーと連携して取り組むことで互いへの理解が深まり、性行為に対する義務感や不安感が和らぐケースもあります。
治療が困難な射精障害について
遅漏や膣内射精障害の改善が難しく、一般的な診療だけでは対応が困難な場合があります。
性欲障害
性欲そのものが低下している、あるいは性行為への関心が極端に薄いケース。
治療にはパートナーを含むカウンセリングや長期的な精神的サポートが必要となる場合があります。
感覚障害
射精に至っても快感が得られない、あるいは陰茎の感覚や神経伝達が損なわれているケース。
神経学的な検査や特別なリハビリが必要な場合もあります。
過去は射精できたが原因不明で徐々に悪化
加齢や病気の進行など、根本的な原因が特定しづらいケースもあります。
心理面や生理面など複数の要因が絡む場合には治療が難航しがちです。
抗うつ薬などの副作用
一部の抗うつ薬、AGA治療薬、前立腺肥大症薬などは性欲や射精機能に影響を与え、治療を継続するかどうかで難しい判断を迫られることがあります。
これらのケースでは、場合によってパートナー同伴での心理カウンセリングや別の専門科(心療内科・精神科・泌尿器科など)との連携が求められることもあるため、早めに相談することが重要です。
練習と環境作りがポイント
遅漏や膣内射精障害の克服には、適切なマスターベーション方法を身につける「練習」と、射精を焦らず行える「心理的な環境」が欠かせません。
特効薬のように即効で改善するものは存在しないため、あせらずコツコツと手順を踏む必要があります。
セックスにおける射精へのこだわりすぎに注意
特にパートナーとの間で「射精にこだわりすぎない」という気持ちを共有することは大切です。
セックスは射精のみが目的ではなく、互いに触れ合い楽しむ時間でもあるため、過度なプレッシャーはかえって状態を悪化させる場合があります。
遅漏や膣内射精障害を改善するためには、過度に「射精しなければ」と意識しすぎないことが必要です。
特に妊活中の方はどうしても射精をゴールに設定しがちですが、パートナーと十分にコミュニケーションを取り、「射精がなくても性行為自体を楽しむ」というマインドがストレスを軽減します。
そうした心のゆとりが結果として改善に寄与するケースも少なくありません。
まとめ
遅漏や膣内射精障害の主な原因は以下の3つに集約されます。
- 不適切なマスターベーションによる感度のズレ(鈍麻性遅漏)
- 加齢や体力低下で勃起力が衰える(衰弱性遅漏)
- 妊活やトラウマなど心理的ストレス(心因性遅漏)
それぞれに合わせた改善策として、正しいマスターベーション法や「Stop and Start Method」で感度を適正化する、ED治療薬や漢方薬で勃起力を補う、専門家のカウンセリングを受けるなどの方法が挙げられます。どの方法を試す場合も継続が重要なので、パートナーとの協力や専門クリニックへの相談を含め、焦らず長期的な視点で取り組んでみてください。
結果として射精までの時間が自然に短縮し、満足度の高いセックスへとつながる可能性が高まるでしょう。