不動産や貴金属、株式や投資信託など、資産運用の手法はいくつかに分類できます。
なかでも現物資産を扱う不動産投資と、株式や債券など証券化されたものを扱う金融投資は対照的な投資方法として比較されがちです。
ここでは不動産投資と金融投資の特徴やメリット・デメリットを整理しながら、どんな人に向いているのかを解説します。
不動産投資とは
不動産投資の仕組み
不動産投資は、マンションやアパート、戸建て住宅などを購入して第三者に貸し出し、毎月の家賃収入を得たり、将来的に物件を売却することで利益(キャピタルゲイン)を得たりする投資方法です。
投資対象となるのは住居用不動産だけでなく、店舗やオフィス、倉庫などの商業用不動産、さらには駐車場や民泊物件なども含まれます。
不動産投資の特徴
物件という現物資産を所有する投資であることが大きな特徴です。
不動産は株式などと違い、建物や土地自体が存在するため急激に価値がゼロになる可能性は低いといえます。また、資産としての担保力を評価され、金融機関から融資を受けやすい点も挙げられます。
金融投資とは
金融投資の仕組み
株式や債券、投資信託、上場REITなど証券化された金融商品を購入する投資方法です。
企業の株式を持てば配当金や株主優待が得られますし、株価が上昇すれば売却益が期待できます。
また、投資信託は専門家に運用を任せられるため、少額でも分散投資を実現しやすい特徴があります。
金融投資の特徴
主にキャピタルゲイン(売買差益)を目的とする取引が多くなりがちです。値動きが大きい商品ほど短期売買によって高リターンが期待できる一方、急落リスクも相応に高まります。
日々のマーケット情報を追いながらこまめに売買を検討する必要があるケースも多いです。
不動産投資のメリット
長期安定の家賃収入
入居者がいれば毎月家賃というインカムゲインが期待できます。
一度借り手を確保できると安定収益が続きやすく、将来的に物件を売却することでキャピタルゲインも狙えます。
インフレに強い
物価が上昇する局面では、土地や建物の価格も上がりやすいため、現金で資産を保有するよりインフレリスクに強いといわれます。
家賃相場も物価上昇に合わせて上げやすくなるメリットがあります。
レバレッジ効果を活用できる
物件という担保価値があるため金融機関から融資を受けやすいです。
自己資金が少なくても大きな投資が可能になり、家賃収入をローン返済に充てながら資産を拡大できる点は不動産投資の強みです。
相続や保険の代わりになる
不動産を相続する場合、現金で相続するより評価額が下がりやすいため相続税対策に有利とされます。
また、投資ローンを組む際に団体信用生命保険に加入すれば、ローン契約者の万が一の際に残債が保険金で弁済され、家族に借金のない不動産と家賃収入を残せます。
金融投資のメリット
流動性が高い
株式や投資信託は取引市場での売買が活発に行われているため、売りたいときに現金化しやすいです。
短期的な資金ニーズがある場合にも対応しやすい点は不動産投資にない強みです。
大きな値上がり益も期待できる
特に株式投資はマーケットや企業業績によって株価が大きく変動するため、ハイリターンの可能性があります。
投資信託なども設定来の成績によっては大きなリターンを得るケースがあります。
専門家に任せられる
投資信託やファンドは、運用のプロが投資先を選んで運用してくれます。分散投資がしやすく、初心者でも比較的ハードルが低い投資手段といえるでしょう。
また、上場REITは証券取引所で売買できる不動産投資信託の一種で、手軽に不動産投資のメリットを得たい人に人気です。
不動産投資のデメリット
購入・保有コストが大きい
物件の取得には多額の資金が必要です。
ローンを組む場合も頭金や諸費用がかかりますし、長期的には建物管理や修繕費、固定資産税などの負担が発生します。
空室リスク
入居者がいなければ家賃収入が得られず、ローン返済の原資がなくなる恐れがあります。
空室対策のためには物件の立地選びやリフォームなどオーナー側の工夫が必要です。
流動性が低い
売却したくなっても、買い手が見つかるまで時間がかかる場合があります。
現金化するまでに数か月以上を要することも多いため、短期的に資金化したい人には不向きです。
災害リスクやデフレリスク
地震や水害などの自然災害で建物が被害を受ける可能性があります。
また、インフレに強い一方でデフレ局面では不動産価格が下がりやすい点にも留意が必要です。
金融投資のデメリット
価格変動リスクが大きい
株価や債券価格は景気の動向や企業業績、金利の変化などによって大きく上昇や下落をすることがあります。ハイリターンの反面、暴落のリスクも高めです。
元本保証がない場合が多い
株式や投資信託は基本的に元本保証がありません。
企業が倒産すると株式は価値がほぼゼロになる場合があります。債券でも発行体の財務状況によっては償還が難しくなるケースもあります。
精神的な負担がある
毎日の株価チェックや市況ニュースの確認を怠ると、気づかないうちに大きく値下がりしている可能性があります。
相場変動に一喜一憂しがちで精神的ストレスが溜まる投資家も少なくありません。
満期や為替リスクがある
満期のある債券は途中売却が必要になる時に思わぬ損失が発生する恐れがあります。
海外の金融商品は為替相場によるリスクも加わり、円安・円高の変動で利回りが左右される点もデメリットです。
不動産投資に向いているケース
不動産投資は10年後や20年後といった長期的な視点で資産形成したい方に向いています。
将来の安定収入や相続対策、インフレリスクへの備えを重視するなら検討する価値があります。
物件リフォームや管理運営の工夫によって賃料収入を上げられる点も、投資家本人の意向を反映しづらい株式などとは異なる魅力です。
まとめ
不動産投資は安定した家賃収入やインフレヘッジなどが期待できる現物投資で、長期的な資産形成に適したミドルリスク・ミドルリターン型の投資といえます。一方で空室リスクや災害リスク、流動性の低さなどにも気を配る必要があります。
金融投資は流動性や手軽さ、ハイリターンを得られる可能性がある反面、相場変動リスクや元本割れのリスクが高い点に注意が必要です。
どちらにもメリットとデメリットがあるので、自身の資金状況や投資目的、リスク許容度を踏まえて最適な投資先を検討すると良いでしょう。長期的に資産を増やし、安定的なリターンを得たいのであれば、不動産投資の仕組みや運用ノウハウを専門家に相談した上で始めてみるのも有力な選択肢となります。
佐藤