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不動産投資の赤字には2種類ある
不動産投資において「赤字」というと、すべて損失のように聞こえますが、実際には大きく2種類あります。
1つ目は、家賃収入よりローン返済や経費が上回り、キャッシュフローまでマイナスになる危険な赤字です。
これは空室率の高さや金利負担の大きさなどによって生じるもので、毎月の現金が足りず事業継続そのものが難しくなるリスクがあります。
2つ目は、建物の減価償却費などによって生まれる帳簿上の赤字です。
実際には家賃収入でローン返済を行い、現金が残っていても、書類上の不動産所得がマイナスになるケースがあります。この「帳簿上の赤字」は、実際の損失ではないにもかかわらず、所得を圧縮して税負担を軽減できるという点で「不動産投資 節税」に効果的です。
キャッシュフローの赤字
家賃収入が足りず、ローン返済や管理費・修繕費を支払えない状態の赤字です。
- 空室率の増加
- 高金利や長期返済で利息負担が大きい
- 管理・修繕コストの高騰
これらの要因が続くと、手元資金が目減りし、不動産投資そのものが破綻しかねません。
帳簿上の赤字
減価償却費など、実際には支出がない経費を計上して不動産所得が赤字になるケースです。
- ローン返済は家賃収入でほぼまかなえる
- 減価償却費で書類上はマイナス
キャッシュフローはプラスでも「帳簿上は赤字」になるため、所得を圧縮でき、結果的に税金が抑えられる可能性があります。
良い赤字のケース
同じ「赤字」でも、将来的にメリットが大きい場合は「良い赤字」とみなせます。主に次の2つのケースが代表的です。
不動産の取得を優先した赤字
たとえば、20年で2,000万円の貯金を作るには、月に8万円以上の貯蓄が必要になり、ハードルは高くなります。
一方、20年返済の融資で2,000万円の不動産を購入し、家賃収入を得ながらローンを返済していく場合、毎月1万円が持ち出しになったとしても、20年後に合計240万円の「赤字」で2,000万円の不動産を取得できたとも考えられます。
ローン完済後は持ち出しが不要になるうえ、返済額分が収益として残るため、長期的に見ると大きなメリットとなり得るのです。
減価償却と損益通算による節税目的の赤字
建物や設備の購入費用を耐用年数に応じて経費化する減価償却は、実際のキャッシュアウトを伴わない「会計上の費用」です。
これによって「帳簿上は赤字、でも現金収支は黒字」の状態を作れれば、不動産所得への課税を抑えられるうえ、給与所得などとの損益通算でさらに税負担を軽減することも期待できます。
ただし、以下のようなケースは損益通算できない、または制限があるため注意しましょう。
- 別荘など趣味・娯楽目的の不動産の赤字
- 土地購入にかかる借入利息相当分は赤字に含められない
- 国外中古不動産の減価償却相当分は損益通算不可(令和3年以降)
不動産投資 節税の「カギ」は減価償却
一般的に、不動産投資における最大の節税要素は「減価償却費」です。
建物や設備は時間とともに価値が減少するため、購入費用を耐用年数に応じて毎年経費として計上できます。とりわけ、築年数が古い中古物件は耐用年数が短いため、短期間で多くの減価償却費を計上できる点が魅力です。
減価償却による赤字のイメージ
- 家賃収入:プラス(ローン返済後もある程度の現金が残る)
- 減価償却費:毎年数十万円~数百万円
- 書面上の不動産所得:マイナス
このように、実際の現金は増えているにもかかわらず、会計上は赤字として扱われます。
結果として、課税対象となる所得が低くなり「不動産投資 節税」の効果が期待できるわけです。
損益通算とは?不動産投資との関係
「損益通算」とは、不動産所得で発生した赤字を、給与所得や配当所得などの他の黒字所得から差し引き、最終的な課税所得を圧縮できる制度のことです。
損益通算の具体例
- 給与所得:3,000万円
- 不動産所得(帳簿上の赤字):-1,000万円
- 課税所得:3,000万円 - 1,000万円 = 2,000万円
所得税や住民税は最終的な所得額に対して課税されるため、1,000万円分の税金が軽減されるメリットがあります。
損益通算できない場合
不動産投資の赤字がすべて損益通算できるわけではありません。
- 土地部分の利息
- 趣味や娯楽目的の別荘の赤字
- 国外中古不動産での過剰な減価償却 など
これらは損益通算が制限されるケースが多いため、事前に国税庁の情報や税理士のアドバイスを確認しておく必要があります。
キャッシュフローの赤字が続くリスクと対策
帳簿上の赤字は節税につながりますが、実質的な赤字が長期化すると、手元資金の不足に陥り、投資そのものが破綻するリスクが高まります。以下のような対策を検討しましょう。
管理会社の見直し
入居者募集力が弱い管理会社だと空室率が改善しにくく、家賃収入が伸び悩みます。
より集客力の高い管理会社への変更も検討材料の一つです。
ローン条件の再検討
借入金利が高いまま運用を続けると、返済負担が大きく赤字が増えがちです。
借り換えや繰り上げ返済を行い、毎月の返済額を低減するのも有効です。
物件の売却・買い替え
立地や築年数の影響で収益改善が見込めない場合は、物件を売却して負債を整理する選択肢もあります。
売却益で新たな高収益物件に買い替えることも考えられます。
まとめ
不動産投資における赤字は、キャッシュフローがマイナスになる危険な赤字と、減価償却費などによる帳簿上の赤字に大別されます。前者は投資破綻につながる可能性がある一方、後者はうまく活用すれば「不動産投資 節税」の大きな味方となるのが特徴です。
ただし、いくら「不動産投資 損益通算」で納税額を抑えられるとはいえ、過度な赤字狙いはかえってリスクが高まる場合もあります。
ローンの返済計画や物件の収益力をしっかり見極め、健全なキャッシュフローを確保できる運用を目指すことが、結果として資産形成の成功へとつながるでしょう。