家賃収入は、不動産投資によるインカムゲインの代表例として多くの方が注目しています。
毎月の安定的なキャッシュフローが見込める一方で、家賃収入には各種税金が課されます。税負担を正しく把握し、適切な節税対策を講じることが、賢い不動産投資・賃貸経営を実現するうえで欠かせません。
この記事では、家賃収入にかかる税金の種類や計算方法、確定申告のポイントなどを詳しく解説します。
目次
家賃収入と不動産所得の違い
不動産を賃貸に出した場合、家賃収入と不動産所得は同じではありません。
両者の違いを把握しておくことで、適切な確定申告や税金対策が可能になります。
家賃収入
家賃収入とは、賃貸経営・マンションを賃貸に出すことで得られる売上の総称です。具体的には以下のような項目が含まれます。
- 月々の家賃
- 礼金
- 敷金・保証金のうち返還されない分
- 管理費・共益費
- 更新料
- 駐車場代
不動産所得
不動産所得は、家賃収入から必要経費を差し引いた金額を指します。
不動産所得 = 家賃収入 - 必要経費
経費として計上できる項目には、管理委託手数料・修繕費・固定資産税・減価償却費などが含まれます。一方、借入金の元本返済や個人的な支出は必要経費に含まれないため注意が必要です。
家賃収入にかかる税金の種類
不動産投資を行い家賃収入を得る場合、主にこの4つの税金が関わってきます。
- 所得税
- 住民税
- 固定資産税
- 消費税(居住用は非課税)
所得税
不動産所得に対して所得税が課されます。所得税は累進課税で、課税対象となる所得が多いほど税率が高くなります。
また、給与所得などほかの所得がある場合には合算されるため、損益通算の有無や各種控除によって納税額が変動します。
住民税
住民税は、毎年1月1日時点で居住している市区町村に対し納める地方税です。所得割(所得に応じた税額)と均等割(一定額)の合計で求められ、目安としては所得の約10%となります。
所得税と同様に、家賃収入だけでなく、給与所得など他の所得を含めて合計所得から計算されます。
固定資産税
家賃収入があるか否かに関わらず、1月1日時点で不動産を所有していれば課税される税金です。
固定資産税課税標準額 × 1.4%(標準税率)を基本に算出され、市町村に納付します。都市計画法に基づく市街化区域に不動産を所有している場合には、都市計画税も追加されます。
消費税
家賃収入が居住用物件のみの場合は非課税ですが、店舗やオフィスのような事業用物件からの収益が1,000万円を超えると、その翌々年から消費税の納税義務が生じます。
居住用と事業用が混在している場合は、事業用の面積比・収益比を基準にして課税対象を計算します。
家賃収入にかかる税金の計算方法
家賃収入にかかる税金を計算するには、まず不動産所得の算出が欠かせません。
- 不動産所得の算出
不動産所得 = 家賃収入 - 必要経費 - 所得税の計算
不動産所得と他の所得(給与所得など)を合算し、所得控除を差し引いた課税所得に応じて、国税庁の速算表を用いて所得税を求めます。 - 住民税の計算
所得税の計算ベースとなる課税所得に対して、各自治体の税率や均等割を用いて算出します。目安は約10%です。 - 固定資産税の確認
不動産を所有している限り毎年納税が必要で、家賃収入とは直接リンクしません。 - 消費税のチェック
居住用以外の収益が1,000万円を超える場合に課税されるかどうかを確認します。
不動産所得は確定申告が必要
不動産所得がある場合、確定申告を行うことで税額を確定し、納税します。
家賃収入からの不動産所得が年間20万円を超える場合は、原則として確定申告が義務付けられます。会社員であっても、副業で家賃収入を得ているなら、所得税・住民税の対象になるので注意が必要です。
確定申告を行うメリット
- 損益通算で節税
不動産所得が赤字の場合、給与所得など他の所得と相殺し課税所得を減らせます。 - 青色申告特別控除
複式簿記で帳簿をつけて青色申告をすれば、最大65万円の特別控除が受けられる場合があります。 - 減価償却費の計上
実際にはキャッシュアウトがない経費を計上し、所得を圧縮できるメリットがあります。
確定申告の手続き
- 必要書類の準備
確定申告書B、(青色申告の場合)青色申告決算書、不動産収支内訳書、経費の領収書など。 - 作成方法
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」や会計ソフトで書類を作成します。 - 提出方法
e-Tax(電子申告)、税務署へ郵送、または税務署に直接持参のいずれかを選択します。
まとめ
家賃収入は不動産投資の安定したインカムゲインとして非常に魅力的ですが、家賃収入にかかる税金を正しく把握することが欠かせません。
家賃収入全体ではなく、不動産所得(家賃収入から経費を差し引いた額)に対して所得税・住民税が課税され、物件保有時には固定資産税の支払いも必要です。また、事業用物件の家賃収入が1,000万円を超えると消費税も課税される場合があります。
正確な確定申告と経費計上を行うことで、納税額を適切に抑えられるだけでなく、赤字計上時の損益通算や青色申告特別控除などの節税メリットを得ることも可能です。
不安な点がある場合は、税理士や専門家に相談し、長期にわたる不動産投資を成功に導きましょう。