イーサリアム(Ethereum)とは、2013年にロシア系カナダ人プログラマーのヴィタリック・ブテリン氏によって考案された「分散型アプリケーション(DApps)開発のためのブロックチェーン・プラットフォーム」です。
イーサリアムのブロックチェーン上で使用される暗号資産を「イーサ(ETH)」と呼びますが、日本ではプラットフォームとしてのイーサリアムと暗号資産としてのイーサを総称して「イーサリアム」と呼ぶことが多くなっています。
イーサリアムは、世界的にビットコインに次ぐ人気と時価総額を誇る暗号資産として注目され、さまざまなユースケースで活用が進んでいます。
目次
イーサリアムの考案者「ヴィタリック・ブテリン」とは
イーサリアムの誕生に深く関わっているのが、ロシア系カナダ人のプログラマー、ヴィタリック・ブテリン氏です。
彼は17歳のときにビットコインと出会い、暗号資産に強い関心を抱きました。
その後、ビットコイン関連の雑誌「ビットコインマガジン」を立ち上げるなど精力的に活動し、2013年の時点で19歳という若さでイーサリアムの構想をまとめたホワイトペーパーを発表しています。
ブテリン氏は若手起業家のための「ティール奨学金」に選出されるなど非凡な才能を発揮し、2021年には保有資産が10億ドルに達した「最年少ビリオネア」としても話題を集めました。
イーサリアムの主な特徴
1. スマートコントラクトを備えたプラットフォーム
イーサリアムには「スマートコントラクト」という仕組みが組み込まれています。
これは、あらかじめ設定した条件が満たされると、自動で契約(トランザクション)を実行するというものです。
たとえば、将来のある時点で指定した暗号資産を自動送付したり、不動産やデジタルアートなどの権利・所有を安全に管理したりできます。
スマートコントラクトの登場により、中央管理者を不要とする分散型サービスの普及が加速しました。
2. DApps開発とトークン発行を可能にする「ERC」規格
イーサリアムは、ブロックチェーン上で自由にプログラムを組める汎用性の高さが特徴です。
その要となるのが、「ERC規格」というトークン仕様です。
ERC-20はイーサリアム上で新しい暗号資産を発行する際の標準規格として広く用いられ、チェーンリンク(LINK)などのトークンもこの規格をベースに生まれています。
また、NFT発行に用いられるERC-721なども存在し、ユーザーはイーサリアムのエコシステム内で多種多様なトークンを発行・運用できるのです。
3. NFTとDeFiの主要なプラットフォーム
イーサリアムは特にNFT(非代替性トークン)やDeFi(分散型金融)の分野で広く活用されています。
NFTでは主にERC-721やERC-1155を利用して、「唯一無二のデジタル資産」を発行・取引する仕組みを実現。
DeFiでは、中央管理者不在のままレンディングや投資などの金融サービスを行うためのアプリケーションが多く開発され、ブロックチェーンゲームや自律的な金融システムが世界的に注目を集めています。
4. ビットコインとの違い
イーサリアムとビットコインでは、以下のような違いがあります。
- 目的・用途
ビットコインは送金や決済に特化したデジタルゴールドとしての性格が強い一方、イーサリアムはDAppsやスマートコントラクトといった汎用的なブロックチェーン活用のプラットフォームです。 - コンセンサスアルゴリズム
ビットコインはPoW(Proof of Work)を採用していますが、イーサリアムは2022年9月に実施された大型アップデート「マージ」(The Merge)によってPoS(Proof of Stake)へ移行し、エネルギー消費を大幅に削減しました。 - 発行上限枚数
ビットコインは2,100万BTCで発行上限が決まっていますが、イーサリアムには現在のところ厳密な上限がありません。
ただし、バーン(焼却)の仕組みによって発行量をコントロールする設計が進められています。
イーサリアムのアップデートと課題
イーサリアムは過去に「The DAO事件」や「The Merge」など多くのトラブル・課題に直面しながらも、その都度ハードフォークや大規模アップデートを重ねることで進化を続けてきました。代表的な課題には以下のようなものがあります。
- スケーラビリティ問題
利用者増加に伴い、Gas手数料(ネットワーク使用料)が高騰したり、処理が遅延したりする問題が発生。
アップデートによりPoS化やシャーディング技術などを導入し、今後さらに処理能力を向上させる計画が進んでいます。 - スマートコントラクトのバグや脆弱性
2016年のThe DAO事件では、脆弱性を突かれ多額のETHが流出。
ブロックチェーンの改ざん困難性が逆に問題対処を難しくし、当時はコミュニティの意見が分かれてイーサリアムクラシックが誕生しました。
イーサリアムの価格推移と今後の見通し
イーサリアムは2021年11月に過去最高値を更新し、2022年には金融引き締めや相場の冷え込みもあって大きく下落したものの、2023年以降再び回復を見せています。
特に、DeFi(分散型金融)やNFTの普及、そして今後のさらなるスケーラビリティ改善に伴い、イーサリアムの利用需要は増すとの見方が一般的です。
また、2024年5月に米国でイーサリアム現物ETFが承認されたことも大きなトピックとなり、投資家層の拡大が期待されています。
コンセンサスアルゴリズムのPoS化で環境負荷を大幅に抑えられた点や、今後のアップデートによるガス代低減などを踏まえれば、長期的に見てイーサリアムは大きな成長余地を秘めていると考えられます。
まとめ
イーサリアム(Ethereum/ETH)は、ビットコインと並ぶ主要な暗号資産でありながら、「スマートコントラクト」や「DAppsのプラットフォーム」としての機能を持ち合わせる点が大きな魅力です。
DeFiやNFTなど、近年の暗号資産業界のキーワードとなっている分野の多くで、イーサリアムが中核的な役割を担っています。
また、2022年9月のマージによるPoS移行により、今後のスケーラビリティ向上や環境問題への対応などが期待されると同時に、さらなるバージョンアップが予定されている点も見逃せません。
イーサリアムの価格は波があるものの、長期的な視点で需要が高まるとみる投資家は多く、NFTやDeFiの隆盛とともにイーサリアムは今後も注目度が高い暗号資産と言えるでしょう。
イーサリアムをこれから購入してみたい方は、ぜひ国内の暗号資産取引所で口座開設を行い、リスクを理解したうえで投資を検討してみてください。