土地に付される指標価格には、公示価格、路線価、基準地価など、いくつかの種類があります。
本稿では、その中でも「公示価格」について、2024年を含む近年の推移を分かりやすくまとめました。
目次
公示価格とは?
「公示価格」は、地価公示法に基づき、国土交通省の土地鑑定委員会が全国に選定した標準地の1月1日時点の適正価格(1平方メートル当たり)を公表したものです。
土地には利用目的や形状、地域特性などさまざまな要素が絡み合うため、売買価格が大きく変動しがちです。
そこで、土地を取引する際に客観的な判断材料となる「公示価格」が活用されます。
どう決まるのか
全国の地域から代表的な標準地が選ばれ、2名以上の不動産鑑定士が過去の取引事例などを分析して評価を行います。
その後、土地鑑定委員会で調整が加えられ、毎年3月中旬ごろに発表される仕組みです。
公示価格はあくまで更地(建物がない状態)としての「正常な価格」であり、借地権や建物の価値といった条件は含まれていません。
不動産売買の重要な指標
公示価格は、国や自治体が実施する公共事業の用地買収などにも参考指標として用いられるほか、相続税や固定資産税などの税務、企業会計での時価評価にも活かされています。
売却の際、「相手の提示額が妥当か」を判断する目安にもなるため、土地の所有者にとっても重要です。
どこで閲覧できるか
公示価格の詳細は、国土交通省が公開している「不動産情報ライブラリー」や各自治体の役場、図書館などで確認できます。
ウェブ上でも検索・閲覧可能となっているので、気になる地域の動向を調べる際に活用すると便利です。
地価の動向が売主に与える影響
- 地価上昇局面
購入希望者の「価格が上がる前に買いたい」という心理が働きやすく、売りやすい傾向があります。
また、利便性の高い地域は需要が集中し、さらに価格が上昇する場合も。 - 地価下落局面
一般的に売却は難しくなり、希望価格から値下がりしてしまうリスクが高まります。
地方部などでは買い手がつきにくく、売却期間も長期化しがちです。
不動産売却の準備には、公示価格に加え、実際の相場観を把握するために不動産会社の一括査定を利用するのがおすすめです。
【2024年】全国で3年連続の上昇!バブル崩壊後最高の伸び率
2024年3月26日に公表されたデータによると、2024年1月1日時点の公示価格は「全用途平均で3年連続の上昇」となり、その上げ幅はバブル崩壊後で最も高水準でした。
ここでは具体的な上昇率や、注目すべき地域の動きをご紹介します。
全国全用途平均の上昇率が拡大
全用途平均はプラス2.3%。2022年(プラス0.6%)、2023年(プラス1.6%)に続き、3年連続で上昇となりました。国内経済の正常化と円安が重なり、インバウンド需要の戻りも大きいことが背景にあるとみられます。
訪日外客数は2024年2月に約278.8万人に達し、観光地や商業地の公示価格を押し上げる要因となりました。
住宅地の傾向
全国平均でプラス2.0%、東京圏がプラス3.4%、大阪圏プラス1.5%、名古屋圏プラス2.8%と堅調な上昇が継続。
地方四市(札幌・仙台・広島・福岡)では上昇率5.6%と特に大きく、高水準を維持しています。
コロナ後の出社再開や都心回帰も重なり、利便性の高いエリアに需要が集中していることが読み取れます。
商業地の動向
商業地は全国平均プラス3.1%と、住宅地を上回る伸びを示しました。なかでも東京圏はプラス5.6%と顕著な回復が見られ、大阪圏(プラス5.1%)や名古屋圏(プラス4.3%)も好調です。
地方四市はプラス9.2%とさらに高い数字を記録しています。経済活動の活発化や外国人観光客の増加で、繁華街やオフィスの需要が盛り上がっていると言えます。
ランキング上位
公示価格の高額トップ5地点は、例年通り東京都の銀座エリアや丸の内が占めました。
銀座4丁目や5丁目は上昇率も大きく、コロナ前の勢いを取り戻しつつあるようです。
丸の内では大型再開発が進み、オフィス・商業施設への引き合いが強まっています。
【2023年】全国で2年連続の上昇率拡大
2023年3月23日公表の公示価格によると、2023年1月1日時点の地価は「全用途平均で2年連続の上昇」となりました。
2022年(プラス0.6%)から2023年(プラス1.6%)へと上昇率が約1%拡大した点が注目です。
住宅地の上昇傾向
住宅地の全国平均はプラス1.4%。都市圏では東京圏がプラス2.1%、名古屋圏がプラス2.3%と、どちらも前年より上昇幅を拡大。
地方四市は8.6%という強い伸びを見せ、地方の都市部も活気を取り戻しています。
商業地も拡大基調
商業地の全国平均はプラス1.8%。東京圏はプラス3.0%、大阪圏はプラス2.3%といった具合で、経済再開への期待感が価格を押し上げています。
地方圏でもプラス1.5%ほど上昇しており、都心部以外にも投資マネーが及び始めている点が伺えます。
上位ランキング
トップ5の顔ぶれは、前年同様、銀座周辺や丸の内などが独占しました。
銀座山野楽器本店や対鶴館ビル、明治屋銀座ビルなどが安定して高値を維持していますが、上昇率は1%以上となり、コロナ禍以前の地価水準に近づきつつあります。
【2022年】全国で2年ぶりの上昇!下落からの回復局面
2022年3月22日に公示された、2022年1月1日時点の地価は「全用途平均0.6%上昇」と報告されました。
2020年のコロナショックによる落ち込みから2年ぶりに上昇に転じた点が注目のポイントです。
住宅地
住宅地は全国平均でプラス0.5%。東京圏(プラス0.6%)や名古屋圏(プラス1.0%)が回復基調を牽引し、大阪圏もプラス0.1%と上昇に転じました。
全国的に住宅需要が盛り返し、低金利と住まい支援施策が有効に働いた結果とみられます。
商業地
商業地は全国平均で**プラス0.4%**に回復。東京圏はプラス0.7%、大阪圏は横ばい、名古屋圏はプラス1.7%と地域差が大きいのが特徴です。観光需要の回復がまだ本格化していないエリアと、コロナ禍でもオフィス需要が堅調なエリアの差が表れています。
高額地の順位
第1位~4位は銀座の主要ビルが占め、5位には丸の内ビルディング(東京都千代田区)がランクイン。上位陣の減価幅が大きく縮小し、多くの地点で1~2%前後のプラスに転じた結果です。
【2021年】コロナ下で全国平均0.5%下落…6年ぶりマイナス
2021年3月23日発表分は、新型コロナウイルスの緊急事態宣言などの影響をまともに受け、全用途平均**マイナス0.5%**と6年ぶりの下落に。商業地の下落率が特に大きく、地域差が鮮明になりました。
住宅地の下落
住宅地はマイナス0.4%。三大都市圏も軒並み下落となり、地方圏でも特に交通不便な地域で価格が下がりました。
商業地の影響
商業地はマイナス0.8%と住宅地よりも大きな下落。観光客の激減やリモートワークの普及でオフィス需要が冷え込み、飲食店の売り上げ低迷が顕著だった都市部での影響が顕在化しました。
上位の安定感
銀座や丸の内が依然トップを独占するものの、上位地点すべてで1~2%台のマイナスが見られ、特に観光客への依存度が高い商業エリアで下落率が大きかったのが特徴です。
【2020年】全国全用途平均が5年連続上昇
2020年3月18日の発表では、全用途平均が5年連続の上昇(上昇幅拡大)を示しました。
背景として、東京五輪需要や外国人観光客の増加が挙げられます。
住宅地・商業地ともに堅調
- 住宅地:プラス0.8%で3年連続上昇。
- 商業地:プラス3.1%で5年連続上昇。銀座や新宿では外国人観光需要が商業地価を押し上げる形になりました。
ランキング上位
1位は銀座4丁目(山野楽器本店:57,700,000円)、2位は銀座5丁目(49,700,000円)。銀座周辺が依然として高位独占ですが、新宿エリアが5位に食い込み、年度によって順位の変動が起きています。
【2019年】全国全用途平均4年連続上昇
2019年発表分では全用途平均が4年連続で上昇。主要都市だけでなく、地方中枢都市の上昇が顕著でした。
住宅地が2年連続上昇
住宅地の全国平均は0.6%上昇と2年連続。低金利政策と企業業績の安定が住宅需要を支えたと分析されています。
商業地は4年連続上昇
商業地は2.8%のプラスで、こちらも4年連続の上昇。訪日外国人客やインバウンド消費の高まりが大きな起爆剤となりました。
【2018年】全国全用途平均3年連続上昇
2018年は、全国平均で全用途とも3年連続上昇が確認され、景気回復の流れが続いている形です。地方中枢都市も継続的に上昇しており、地価全体の底上げが実感される年でした。
【2017年】全国平均は2年連続の上昇
2017年公示価格で見ると、全用途平均は2年連続の上昇。住宅地は前年の下落から横ばい、商業地は2年連続のプラスで上昇幅拡大。銀座エリアや丸の内のオフィス街で大幅に地価が押し上げられました。
【2016年】全国平均が上昇に転じ、用途別下落幅も縮小
2016年は全用途平均が上昇に転じ、三大都市圏では上昇傾向を鮮明化。北陸新幹線開業の影響で金沢市を中心とする一部地域では2桁の上昇率が見られました。
【2015年】住宅需要が好調で下落率縮小
2015年は全国的に住宅需要が堅調で、住宅地の下落幅が縮小。三大都市圏では一部地点で上昇に転じた例も多く見られました。北陸新幹線開業による金沢市の大幅上昇が話題に。
まとめ 公示価格を知り、不動産売却に活かそう
公示価格は国土交通省が毎年3月に発表する土地価格の客観的指標です。
- 土地を売買するうえで価格判断の根拠
- 相続税や固定資産税など税務評価のベース
- 不動産投資判断や再開発計画の参考指標
近年の地価の動向をざっくり振り返ると、2021年はコロナの影響で一時的な下落となったものの、2022年以降は明確に回復基調。
2023年・2024年はインバウンド需要回復や金融緩和が相まって、住宅地・商業地ともに上昇率を大きく伸ばしている状況です。
将来的に土地を売る場合は、地域特性を踏まえた相場観を把握しつつ、公示価格や実際の取引事例を参考に査定を進めることがポイントになります。
売却を検討している方は、まずは複数社の査定をカンタン1分で依頼し、実勢価格とのギャップを確認しておくと安心です。
必要に応じて、不動産の専門家に相談し、公示価格と実際の売却可能価格を見比べ、より納得のいく不動産売却を目指しましょう。